2015年に放送されそのいい具合に緩〜い味わいが支持されたアニメ『美男高校地球防衛部LOVE!』が「まさかの舞台に!?」と注目されていた『美男高校地球防衛部LOVE!活劇!』。3月10日Zeppブルーシアター六本木で行なわれた公開ゲネプロでは、上演前にキャスト8名が“変身後”のコスチュームで囲み会見に登壇。その凛々しくもキュートな姿にプレス陣からも歓声が上がるなど、ホットな空気に包まれて公演がスタートした。




 
 物語の中心は、眉難高校に通う箱根有基(赤澤燈)・由布院煙(五十嵐麻朝)・鬼怒川熱史(越智友己)・鳴子硫黄(高崎翔太)・蔵王立(荒牧慶彦)の5人の日常。彼らは帰宅部ならぬ“なにもしない部”、通称“地球防衛部”の部室に集まってはゆるゆると高校生活を送っていた平凡な男の子たち。しかし、突如現れたピンクのウォンバットの謎の判断で地球を守る戦士に抜擢。変身アイテムのラブブレスレットの力で“ラブメイキング”すると、愛の王位継承者・バトルラヴァーズに変身して怪人たちと戦うことになるという、ちょっと面倒な青春を送ることになってしまう。その彼らの元に怪人を送り込んでいるのが、“征服部”と呼ばれている草津錦史郎(前山剛久)・有馬燻(伊万里有)・下呂阿古哉(柏木湊太)の生徒会メンバーだ。舞台版はそんなアニメの基本設定を前提に、舞台オリジナルストーリーで展開。演劇部・北島マヤオ(西山丈也)の演劇部合宿に便乗した防衛部を中心に、温泉地で次々と騒動が展開していく。


 
 構成・演出の村上大樹は、これまでも若い俳優たちと組んで奇想天外、荒唐無稽な演劇で数々の“共犯作”を生み出してきただけあり、この地球防衛部ならではの中毒性のある緩さをガッチリ把握。バカバカしくもちょっとホロリとカッコいいマンガチックなストーリーで、観客が登場人物すべてを愛おしく感じてしまう愛嬌たっぷりのエンタメを用意してくれた。


 
 防衛部&征服部の面々も、まさにアニメから飛び出して来たような個性豊かなキャラクターたちを爽やか&おバカに好演。全力の振り切りっぷりでそれぞれのキャラクターの魅力を確実に引き出し、互いのコンビネーションから生まれるチーム男子感も満載という完璧さだ。舞台オリジナルキャラの老婆島デニ郎(山岸拓生)・北島マヤオ(西山丈也)・道場一徹(西ノ園達大)もアクの強い役柄で演劇的攻撃を次々に仕掛け、作品に賑やかさを添えていた。


 
 「2.5次元の舞台の限界ってあるよな」と、自虐的ツッコミを放つ登場人物のあっけらかんとした空気を受け、超アナログ表現に甘んじるウォンバットや征服部の影のトップ、ズンダーの可愛さも舞台ならでは。また、原作ではお約束の入浴シーンや防衛部のラブメイキングシーンは、大浴槽や大スクリーンを駆使しながらいろんな意味で出し惜しみせずのサービス描写! 客席を、原作ファンを大いに湧かせてくれた。


 
 「本当にとんでもない作品に手を出してしまいました」(赤澤)、「ヤバイシーンのオンパレードですね」(五十嵐)、「こういうお仕事じゃないとなかなか着れない衣装です」(越智)、「本当に中身のない作品になっています(笑)」(高崎)、「作品を研究し尽くした上のバカバカしさを愛して欲しい」(荒牧)、「防衛部じゃなくてよかったです(笑)」(前山)、「シュールなところがいいですよね」(伊万里)、「お客さんに笑顔になって帰ってもらえたら」(柏木)──というキャストの挨拶からもわかるように、様々な手法を凝らして新たに生まれ続ける2.5次元舞台の中にあり、このほのぼの感と放り投げ感、そしていい意味で開き直りながらカンパニー全員が作品の世界観をエンジョイしまくっている空気はなかなか壮快。強いのか強くないのかよくわからない怪人と全力の素敵アクションで戦う防衛部の姿も潔く、彼らのトンデモな戦いの日々をもっともっと見たくなってしまう。またひとつ、シリーズ化が望まれるタイトルが出現した。

 
[文・横澤 由香]
 

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©馬谷くらり/眉難高校演劇部
主催:マーベラス、ポニーキャニオン、セガ・ライブクリエイション