数々のアイドルスターを輩出してきた由緒ある養成学校〔私立夢ノ咲学院〕を舞台に、アイドルへの夢を抱いた少年たちの成長を描く人気育成ゲームの初舞台化。ライブシーンをふんだんに盛り込んだショー要素の強い華やかなステージ構成で、キャストと観客の一体感も嬉しいフレッシュな感覚の舞台となった。



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 開演前からキャラクターの映像とアナウンスによって繰り返し観劇についてのレクチャーが流されるなど、場内は“初あんステ”“初観劇”でも安心の温かな空気でオーディエンスをお出迎え。アットホームな雰囲気に早くも客席には「ここにいるみんなで綺羅星のアイドルを目指す原石たちを応援しよう!」という思いが満ちていく。その感覚はまさに自ら校門をくぐり学院生としての一歩を踏み出していったかのようなワクワク感だ。さらに、本番開始早々からキャストたちが客席降りをしてやさしく場内を煽ってくれたのも観客の心に応援魂の火がつく速さにつながり、結果、終始距離感の近さで愉しめるステージが実現した。


 
 今作で登場したアイドルたちはいずれも人気のユニット、Trickstar、UNDEAD、紅月、流星隊、Ra*bits、2wink、Knightsのメンバー総勢17名。コスチュームも楽曲もパフォーマンスも色とりどり。ユニットごとにしっかりとコンセプトがあり、互いに互いの存在を刺激に伸び合う“仲間だけどライバル”な関係も青春チックで、次々に繰り出される彼らの華やかなライブを愉しんでいるうち、思わずすべてのユニットを推しにしたくなってしまう。その気持ちは…ライブシーンで迷わず発散! ペンライトやうちわを振ってステージへと声援を送れば、彼らは様々な形でレスポンスをくれる。これぞ〔あんステ〕ならではの双方向な舞台空間。これぞ、アイドルステージの醍醐味だ。
 ドラマパートも決してライブとライブのブリッジなどではなく、限られたシーンの中でもひとりひとりの個性がちゃんと伝わって来る丁寧さが読み取れ、すべてのキャラクターが愛情を持って描かれていた。


 
 ゲネプロ後の会見で主人公・明星スバル役の小澤廉が「アイドルのキラキラした笑顔は心の底からそう思わないと本当のキラキラな笑顔にならないんです」と語ったように、ステージ上のアイドルたちは終始観客に向けて全力で愛を配ってくれていた。また「みなさんが僕らのキラキラに押し負けてしまうほどのエネルギーで挑むので、しっかり受け止めにきてください」(氷鷹北斗役・山本一慶)、「僕たちのチームワークや日替わりの熱いアドリブネタにも注目して欲しいです」(遊木真役・松村泰一郎)、「それぞれのユニットに絆があり、最後は全員がひとつになっていく作品です」(衣更真緒役・水谷力)というTrickstarメンバーの真っすぐなコメントは、そのままカンパニーの全員に共通した思いと言えるだろう。


 
 ユニットメンバーは多少の差こそあれ、基本的には学生であり原石。まだまだ発展途上な危うさや瑞々しさがただよう“発展途上”なところも魅力だ。今作ではそんな彼らを演じる役者の多くがまだ新人というキャスティングも大きなポイントで、役者本人の伸びしろと頑張りがそのまま役にもフィードバックする“バーチャル・リアリティ”風味も欠かせない要素となっていた。人気の役者が揃った安定感のある座組も味わい深いが、原石揃いの“今しかない”フレッシュな輝きも貴重。こうした新たな出会いと発見があるたびに、2・5次元舞台というシーンの可能性の豊かさを実感する。生まれたて感溢れるステージ、いいじゃないか! みんな、まだまだ育ち盛りだ。


 
 
[文・横澤 由香]
 

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